あらすじ:
アメリカ月面着陸の真歴史を発掘するため1969年のアメリカにやってきたトキオたちは、アポロ11号が打ち上げられたケネディ宇宙センターではなくハリウッドに到着したことに疑問を持つ。真歴史反応の出たスタジオに潜入したトキオとカレンは、ジューブリックが月面着陸のヤラセ映像の撮影依頼されるシーンを目撃して、今回の真歴史が月面着陸がヤラセだったことだと判明する。トキオたちに秘密を知られたジューブリックは、二人を撮影スタッフのバイトになるよう要求して、トキオたちは一旦断ろうとするのだが、アメリカの宇宙飛行士がいなくなった原因が巨大宇宙昆虫(第9話のメカブトン)にあると知って、お詫びのため撮影の手伝いをすることになった。

ニクソン大統領の無茶振りに振り回されながら撮影が続く中、アクダーマは真歴史発掘を阻止するため、宇宙飛行士役のアームストロングを誘拐して月面着陸させるのだが、月面に現れた巨大宇宙昆虫(ピコボーの操縦するクワガッタン)に驚いて地球に逃げ帰ってしまう。

トキオたちのいるスタジオの屋根をぶち破って不時着したアクダーマは、撮影用の自由の女神にスキャン銃を照射して自由の女神メカを作り出し、そこに月面からクワガッタンが戻ってきてメカ戦に突入した。自由の女神メカは自由操縦でアクダーマの意思とは無関係に動き回り、プロレス技を駆使してクワガッタンを圧倒。ピンチに陥ったトキオたちはオケドリラーを呼び出した。自由操縦の自由の女神メカは、オケドリラーに興味を示さずその場で砂遊びを始めてしまい、オケドリラーは地中からカンチョー攻撃すると、その隙にクワガッタンとスーパードッキングしてボカンドリルに変形。再びカンチョー攻撃して自由の女神メカは爆発した。

そして月面着陸当日。ジューブリックはヤラセ映像ではなく「アメリカはフリーダム星人の侵略を受けていたからである」と自由の女神メカとクワガッタンの戦闘シーンを全世界に公開。ニクソンの送り込んだシークレットサービスに命を狙われ、逃げる途中にダイナモンドを落として真歴史達成となった。

一方、24世紀に帰還したビマージョは月旅行に行きたかったと嘆いていた。そこにオヤダーマが「月への片道切符くれてやるダーマ」と現れて、アクダーマは頭にウサミミを着けられてバニーガール姿にさせられると、床下がロケットになってそのまま月に向かって打ち上げられてしまうのであった。


真歴史:アメリカの月面着陸はヤラセだった。

*ゲストキャラクター
ジューブリック:樫井笙人
ニクソン:松本保典
アームストロング:矢部雅史
ラムズフェルド:坂東尚樹
ケネディ:杉崎亮
通販社員:佐々健太


善玉メカ:クワガッタン、オケドリラー(ボカンドリル)
悪玉メカ:自由の女神メカ

コクピットメカ:
お色気豚「お色気、ムーン、ムーン」

おしおき:バニーガール姿で月に打ち上げられる

視聴率:3.9%




感想:
今回の話はタイムボカン24という作品の集大成とでも言うべき完成度でした。良い意味ではありません、悪い意味です。

これまで色々と感想を書き続けてきましたが、その中でストーリーに多くの矛盾や問題点があると指摘してきました。未来人の介入ありきの真歴史、真歴史を制御し切れていないストーリー、設定が矛盾して脚本家同士の連携が取れていない、メカ戦に緊迫感がないなど、細かくあげればきりがありません。今回の話は、これまで指摘してきた問題点その全てに該当するという、まさに集大成としか言いようがない内容で、ここまで突き抜けていると、ある意味爽快ですらあります。

今回の真歴史は、第9話でガガーリンの真歴史を達成した結果発生してしまった真歴史です。第18話でオヤダーマが言っていた「未来人が過去の歴史を変えるのは歴史法違反で、懲役300年の磔の刑」に該当するわけですが、何故トキオたちは捕まらないのでしょうか。同じく同時期の真歴史であった第10話(虫取り)と第11話(パンツ伝来)は相互に影響を与えておらず、また、第6話で達成した「鳥取オア島根」も第7話でなかったことにされているのに、今回に限って歴史に影響を与えているのも変な話です。

また、真歴史を達成することで後世の歴史に影響を与えてしまうことが公式設定となってしまったことで、別の新たな問題が発生してしまいました。一つの真歴史が別の真歴史を生み出す、これはつまり、タイムボカンすればするだけ真歴史が無限に発生することを意味します。しかも、出かける時代は毎回バラバラで過去から順に達成していないため、一度達成した真歴史が、その前の時代の真歴史を達成したことで変革されて、全く別の真歴史に変わっている可能性もあります。第10話の虫取り合戦も、第11話でパンツ伝来を達成したことで全く違う真歴史に変わっている可能性もあるわけです。

もしかしたら、真歴史そのものがタイムマシン完成時の試運転に端を発したバタフライ効果の産物なのかもしれません。試運転で生じたほんの僅かな歴史改竄が別の時代の真歴史を生み、その真歴史を確認しに行ったことで別の新しい真歴史が発生し……、と無限連鎖的に影響が広まった可能性もありますが、それだと歴史教科書に本来の歴史が記載されたままになっている理由が説明できません。未来に影響を与えたり与えなかったり、脚本家同士の連携が取れていないため、きちんとした骨格の上に構築されたストーリーとは思えないのです。

結局のところ、「教科書の歴史は全部ウソで真歴史が隠されている」という設定そのものに無理があったとしか言いようがなくて、1つのエピソードをまとめるのに精一杯で全体を制御することが不可能となり、破綻まみれの滅茶苦茶なストーリーをギャグで誤魔化して体裁を整えているだけの有様となっています。後世の歴史に影響を与えても与えなくても問題が生じる、まるでニトログリセリンのような真歴史をストーリーに採用したこと自体が間違っていたとしか思えません。

少し脱線しましたが、今回の話に戻しますと、真歴史だけでなくアクダーマの行動もおかしなもので、アクダーマの目的は教科書の歴史どおりにアメリカを月面着陸させることなのに、何故パンダや自由の女神を連れて行く必要があったのでしょうか。アポロ11号が月面にパンダを連れて行ったなんて話が歴史教科書に載っているはずもなく、役者のアームストロングを月面に連れて行った時点で指令成功していたのに、ご都合主義を通り越して意味不明で呆れてしまいます。月面にピコボーたちがいた理由も意味不明で、「月面着陸はヤラセだった」が今回の真歴史なのに、何故月面で待ってる必要があったのか。もし真歴史を知らなかったとしても、月面着陸するのはアポロ11号でトキオたちが来るわけありません。しかも実際に乗ってきたとしたら、それはそれで歴史法違反となるわけで、どう擁護しても矛盾が生じます。

そしてメカ戦。その場のアドリブでスキャンしたのに自由操縦にしましたって、ツブヤッキーはどこで設計に介入したのでしょうか。しかも操縦には一切ノータッチで緊迫感ゼロ。元祖タイムボカン第26話に登場したアシカメカもAI搭載で似たようなメカでしたが、あちらはメカと会話できて行動を制御できていたので(最後は改心して自爆したが)、二番煎じをパワーダウンさせたような印象を受けました。

もう一つ不思議なのが、なぜ今回の話に自由の女神メカを登場させたのかという点です。アポロ11号の月面着陸と自由の女神は無関係で、同じ国に存在するぐらいしか共通点がありませんし、地理的にも遠く離れています。登場させた経緯も不可解で、ニクソン大統領が無茶振りして、スタジオに急遽用意して、それをツブヤッキーがスキャンして登場と、本来ならその場に存在しないのに、強引に辻褄を合わせただけの力業となっています。これについては、何らかの事情で悪玉メカが差し替えられた結果と思われますので、コラムでまとめてみました。

というわけで、今回の出来は酷いもので、かなり辛口な感想になってしまいました。月面着陸が撮影だったという話は有名な俗説であり、真歴史と教科書の歴史が表裏一体な存在であることを匂わせて最終回へ伏線を張る……という熱い展開を期待していただけに、肩透かしどころか目隠しでビル屋上から突き落とされたような意味不明さに、昨日一晩ずっと混乱したままでした。

もしかしたら今回の真歴史は「ニクソン大統領はヤク中だった」にする予定が、大人の事情で差し替えられたのではないでしょうか。この作品に有終の美を期待するのはもう諦めました。


*登場人物について

トキオ:人間大砲やらされるドM。

カレン:地球とロケットのコスプレするドS。スタジオ潜入する際にコスプレして大道具に擬態している。

ジューブリック:キューブリック監督のパロディで、ネーミングはジュジャクと同じパターン。トキオとカレンが身を隠していた猿とモノリスのスチールは「2001年宇宙の旅」の一場面となっている。

ビマージョ:行動が意味不明だったがお色気は頑張っていた。

ツブヤッキー:バニーガール姿がキモイ。

スズッキー:パンダを捕まえる姿が生き生きしていた。「月だけにムーン、ムーンに…」と言い掛けたところでメカが爆発。