ドロンジョは、タツノコアニメの中で最も知名度の高いキャラクターの一人であり、日本のアニメ史上に大きな影響を与えた歴史的キャラでもあります。しかし意外なことに、ドロンジョの過去については、ほとんど何も判明していません。

このドロンジョについて、ネット上では「本名はササッガワ・ヒロッコである」という話がまことしやかに語られていますが、これは完全なデマです。

2009年3月に、川崎で開催されたボカンイベントにおいて、脚本家の小山高生先生に、この本名について質問した方がいたのですが、小山先生は「全くの初耳だ」と答えています。また、このイベントにはタツノコ関係者の方が来ており、その方がタツノコに戻って調べてみたところ、初期設定にそのような記述は見当たらず、笹川ひろし監督も「知らない」と答えたそうです。

では、なぜこのような情報が、ネット上で出回るようになったのでしょうか。事の発端は、あるホームページに、次のような記述がされていたことから始まります。

ドロンジョの本名1


本名、ササッガッワ ヒロッコ
出身、コクブーンシティ
実家、タツーノコックという大会社の令嬢
タツノコ初期設定資料より

3悪ドットコムの掲示板に、この記述を見た方が情報提供してくださったのですが、これらの情報を裏付ける資料が存在しなかったため、あくまで未確認情報として、タイムボカンデータベースに掲載していました。この話が他のサイトに転載され、多くの人たちの間で伝聞されていくうちに、いつしか情報が一人歩きしてしまい、これが本名であると断定的に語られるようになってしまいました。

ドロンジョの本名2


では公式には、ドロンジョの過去は、どのような設定になっているのでしょうか。ヤッターマン放映当時、ドロンジョはマージョと同一人物である、という設定があったのですが、これは後に無かったことにされたので、考察から外しておきます。

この件について、以前タツノコのホームページで公開されていた「タツノコ世界遺産」というコーナーに、興味深い資料が展示されていました。ヤッターマン放映当時に発売された絵本が紹介されていたのですが、その中にドロンジョの生い立ちが書かれていました。

ドロンジョの生い立ち


「ドロンジョのそだち」
1.お金もちの家に生まれる。
2.有名な女子大学を卒業。
3.宝石あつめが趣味で、世界中を旅行する。
4.ある日、ドクロベエに会い、ドロンボー一味に誘われた。
5.泥棒の腕を磨いて、世界一の大泥棒になるのよ。

ドロンジョの過去が詳細に書かれており、非常に興味深い内容となっているのですが、4の記述が本編と矛盾しています。絵本では、ドクロベエに誘われてドロンボーに入ったことになっているのですが、実際には、ドロンボーとしてインチキ商売を行った後にドクロベエと出会っており、第1話の内容と一致しません。

そんなわけで、この絵本は信憑性が疑わしいため、3悪ドットコムでは黒歴史として見なかった事にしているのですが、出版社がこのような話を独断で捏造するとは思えず、そもそも完全な捏造であるならば、タツノコ公式サイトで紹介されるはずがありません。当時の一部スタッフの間で、ドロンジョの生い立ちについて、このような設定がされていたと考えるのが自然であり、そうなると、先ほど紹介したドロンジョの本名についても、あながち間違ってなかったのではないか、という結論に達するわけです。

当時の設定がどうであったにせよ、本名に関しては、ボカンの重鎮二人に明確に否定されているわけで、ボカンの公式設定から完全に削除されています。同様に絵本の記述についても、本編と矛盾している部分があるため、参考資料の域を出ません。タツノコ公認のボカン資料において、ドロンジョの過去について語られているのは、たった一行のみ。タイムボカン全集2の104ページに、「一説によるとリーダーのドロンジョは、大金持ちのお嬢様だったという」と記述されているだけです。

ちなみにこの記述も、先ほどの絵本が情報源と考えられており、ボカン全集2の筆者も第1話との矛盾に気付いたためか、『一説によると』と付け加えています。テレビ放映では、第71話でドロンジョが「東大を出ていない」(出身校ではない、という意味)と答えているのみで、それ以外の過去は一切不明となっています。

(このコラムはタイムボカンアカデミーとして動画配信した原稿に若干加筆したものとなっています。)